統合失調症の経過を表すグラフと回復の7つのステップ

統合失調症の経過としては、前駆期・急性期・消耗期・回復期の4段階があるとされています。その移り変わりをグラフにしたものを症状曲線といいます。
ここでは、その症状曲線を見ながらそれぞれの時期の特徴について説明したあと、グラフ上に回復の7つのステップをプロットして、病者の内面の変化についても解説してみようと思います。

 

統合失調症の経過を表す症状曲線

前駆期

この時期は、統合失調症の前兆ないしごく初期で、微細な症状が現れます。
物音が気になる、不眠、気分が変わりやすい、などです。
私の場合は、睡眠時間が短くても平気で絶好調になりました。振り返って分かったことです。

 

急性期

この時期は、陽性症状といわれる派手な症状が強く現れる時期です。
陽性症状とは、幻覚や妄想に代表される症状で興奮も見られ、症状が支配的になると現実が分からなくなり、周囲の人から「こいつおかしいぞ」とわかるような言動をします。
私の場合は、「こんど教祖になる」という妄想を抱き一部の人に訴えたりしました。
急性期では周囲にも症状が分かるため、通院につながります。そこで薬物療法を受けることにより、症状が収まっていき、次の消耗期に移ります。

 

消耗期

この時期は、陰性症状と呼ばれる症状が多く見られます。
陰性症状とは、意欲が出ない、疲れやすい、いくら寝ても足りないなど、パッと見ではわかりにくい症状です。
急性期でエネルギーを出しすぎたため消耗していると考えられています。
私の場合は、感情が大きな重い塊となって体の中に居座り(気が重いのではなく)、身動きが取れない状態となりました。

 

回復期

この時期は、エネルギーが次第に回復していく時期です。
心と身体に余裕が少しずつ出てきて、周囲への関心が戻って来る時期です。
デイケアや地域活動支援センターなど負担の少ない社会資源の利用から始め、就労継続支援B型事業所の利用へと活動の幅をゆっくりと広げていけるでしょう。
私の場合は、患者会・地域活動支援センター・ボランティア運営のサロン・就労継続支援B型事業所など一気に活動の幅を広げすぎたせいでストレスがかかりすぎ、帯状疱疹になってしまいました。

 

タイムスパンについて

症状曲線の横軸には、ふつう目盛りがふられることはありません。それは、回復にかかる時間が人により大きく違うことがあります。
ここであえてそれぞれの時期にかかる時間の目安を言えば、消耗期で10年、回復期で10年でしょうか。急性期で受診した後、服薬を続けて順調に回復したとしても、これくらいはかかることを覚悟しておいたほうがいいと思います。
あくまで目安で、これより長くかかる可能性がありますし、早かったとしたら儲けものといえるでしょう。
それくらい、統合失調症は回復に長くかかる病気なのです。

 

 

症状曲線に、回復の7つのステップをプロットしてみた

 

私は闘病生活において、この症状曲線をながめ、「自分はいまこのあたりにいるんだな」などと自分を客観的に捉えるツールとして使ってきました。ずいぶん役立ったと思っているのですが、少し不満に感じる部分もありました。
それは、このグラフには症状の変化は示されてはいても、それぞれの時期に病者が何を思いどんな気持ちで過ごしているのかが示されず、病者の人としての顔が見えなかったことです。
それは当然かもしれません。症状曲線は症状を診る医師よって描かれてきたからです。
そこで、この症状曲線に、病者の心の移り変わりをプロットしてみようと思い立ちました。
それが、緑色の字で示している私たち病者が経験していく「回復のための7つのステップ」です。
各ステップは病者の心の移り変わりを示すもので、その心の状態は病状によって決まるわけではありません。図上に示したのは、心の状態を示す各ステップが、病状のそれぞれの時期に〝おおむね訪れる〟ということです。
当然、個人差がかなりあると思います。

各ステップについて簡単に説明します。

 

ステップ1:病気に気がつかない

 

統合失調症が発症したとき、本人はどう感じているでしょうか?
「この感覚は以前と違うけれども何なのかな?少し違和感があるけどたいしたことないから様子を見よう。」
というのが、多くの人の感じ方なのではないかと思います。
私の場合、以前と違う感覚とは、何かの標識や看板・掲示物などに書かれた文字が私に向かってまたたくことがあり、私に対して何かサインを送っているように感じることでした。
そうした以前と違う感覚があるのですが、それが病気によるものとは思わず、変わったことが少しだけ自分に起きているという意識でした。
その感覚がエスカレートしていき、他の症状(より強い幻視や妄想)も加わっていきました。

このステップでの課題は、病気に気がつく(ステップ2に移行する)ことです。

 

ステップ2:病気に気がつく・知らされる

 

症状が進行していき症状が「溜まって行く」と、自分でもこれはおかしいと感じるようになります。

自分はどこか変だ
何とも苦しい
長期休みがほしい

と切実に感じます。
そうなると、自分で病院に行こうと思うことがあります。私の場合はそうでした。
あるいは、妄想が激しくなってくると、周囲に訴えることが現実では到底あり得ないものとなり、家族や友人・近所の人が「これはおかしい」と判断して病院に連れて行くことになります。
それは本人にとって不本意なことで受診を嫌がる場合もありますが、治療をするうえでは受診が不可欠です。

このステップでの課題は、受診することです。

 

ステップ3:病気に絶望・拒否する

 

否応なく自分が病気だと知らされると、病気に絶望したり病気であると受け容れるのを拒否したりします。
これには人によりまた時期によりさまざまなパターンがありますし、その度合いも違います。
受信拒否、服薬拒否、「自分は病気じゃない」と訴える、「自分には生きる意味も価値もない」と絶望する、などです。

このステップでの課題は、底まで落ちることです。

 

ステップ4:病気に観念する

 

ステップ3で挙げた病気による絶望や病気の拒否だけでなく、さまざまな色合いや度合いのわだかまり・欲求不満が病気にはつきものです。そのため、自分が病気であるという事実にイライラしながら生活することになります。
そのように「病気に反抗」することに疲れ、病気に「マイッタ」をするときがおとずれます。それがステップ4です。
マイッタとは、お手上げ状態、バンザイするということです。あとは神様・お天道様にゆだねます、ということ。マイッタが深ければ深いほど、のちのち心理的により安定していくようです。重要なステップです。

このステップでの課題は、底に立ち上を向くことです。

 

ステップ5:病気を受容する

 

病気に観念すると、自分が病気であることを納得する段階がおとずれます。このステップ5から、病気に対して自覚的主体的に対処出来るようになります。
ステップ1やステップ2、ステップ4などで自分が経験してきたそれぞれの“普通でない”感覚・状態・行動などを思い返し、それらを引き起こした原因がすべて統合失調症という病気にあったのだ、と一つずつ確認していきます。
また、人により時期が異なりますが、「病気になったのは、親(家族)が悪いわけではない」ことに気づきます。父親・母親の自分への対応や育て方が悪かったのだという考えを捨てます。それは誤解だからです。親を責める気持ちから解放されます。

このステップでの課題は、自分に責任を持ち、正しい知識と理解を得ることです。

 

ステップ6:病気と折り合いをつけることを知る

 

精神的に病気を受容出来てくると、その病気に自分がどのように対して行くのか探求が始まります。病気と折り合いをつけるようになっていきます。
この時期で最も大切なのは、「基準を下げる」ことです。
これは、現状として出来ないことがあることを認め、そんな自分を受け容れることです。病者には病者のペースと基準があることを知ることです。
これが出来ないと、発病前に自分が出来ていたことが出来ないことに耐えられず、大きなストレスを抱えることになります。
自分を振り返り、「あ、俺、ダメじゃん。出来てないじゃん。」と認め、基準を下げることです。これは大きな一歩になります。

このステップでの課題は、病者のペースを知り、基準を下げることです。

 

ステップ7:出来ることをすればよいことを知る

 

病気と折り合いをつけるようになる、つまりいろんなことが出来なくなってしまった自分を受け容れられるようになると、ではその出来ない自分に出来ることは何だろうという意識が出てきます。
楽しめることを探す、同じ病気の人を知る、仲間を作る、小さなことは良いことだと思う、など、社会性を取り戻していく段階です。

このステップでの課題は、社会性を取り戻すことです。

 

 

まとめ

 

自分が病気だと知らされたあと、絶望・拒否する時間は、人により大きく違うでしょう。
ステップ3「病気に絶望・拒否する」の時間が長い人の場合、ステップ4「病気に観念する」に移行するのはかなり遅れることになるでしょう。グラフの回復期の入り口近くまで遅れるかもしれません。
図で示したものは、ある意味理想的に推移した場合といえます。
ただ、治療が順調に進んだ場合には、病状が消耗期から回復期へと進む過程で、病者の感じる苦痛も軽減されていきますから、おのずと病気を受け容れやすくなっていきます。回復期に入っていても病気を受け容れないでいるということはあまりないのではないかと思います。
病状の変化とステップの進行には相関関係があるのです。これが、病状の変化のグラフ図の中に各ステップをプロットした理由です。ただ、それぞれのステップはおおむねその時期に訪れるということで、厳密ではなく個人差があるということです。

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ABOUTこの記事をかいた人

谺(コダマ)ッチャンこと、児玉朋己といいます。シンガー・ソング・ピアカウンセラーをしています。 静岡県藤枝市にある自立生活センターのおのころ島が運営している地域活動支援センター「りんりん」の施設長として精神障害を持つ方へピアカウンセリングを行うほか、シンガーソングライターとして音楽活動をしています。