精神障害者のあなたが働くということ【3】

 

あなたは「ステップ4」以前・以後、どちらにいる?

これまでの説明で、精神障害者とはどんな人なのか、ということをおさらいしました。

闘病を続けてきたあなたも、「こういうことあるある!あったあった!!」「ここは自分にはあてはまらないな。」とか、いろいろ思うところがあったかと思います。

ここで、就活するにあたって留意しておくとよいことについて話したいと思います。

あなたは「ステップ4」以前・以後、どちらにいるでしょうか?

私がこれまでおのころ島の相談支援やりんりんで利用者へ対応するなかで経験してきたこと、また自分自身を振り返ってわかることは、あなたがステップ4(病気に観念する)以前にいるのか以後にいるのかで就職活動が成功するか否か、その可能性が大きく変わるということです。

これは、あなたの心の状態でいうと、「自分は以前とは違ってしまって元には戻れないんだ」という諦めをしているか否か、ということになります。諦めというと、落ち込んでがっかりしている状態が連想されますが、そういう辛い瞬間を通過してその諦めを自分の心に織り込んでいるか否か、ということです。

では、あなたが病気に観念しているかどうかはどのようにわかるのでしょうか。

 

それは、あなたの心の状態や、あなたが周囲にさかんに訴える内容でわかります。

ステップ4以前の人の特徴は、

  • 焦り
  • 切迫感
  • 無謀無茶
  • 同じところをグルグル回る
  • 言葉に行動が追いつかない

です。

 

わかりやすく就労についての話にしましょう。

ステップ4以前の人は、「早く就職しなきゃいけない」「一刻も早く就職したい」ということを焦りや切迫感に駆られて話します。

そして、実際に就職活動もしますが、希望の基準が高く、クローズ(自分が病気だと相手に伝えない)で一般就労をしようとします。

その際、自分の病状や生活を吟味せず、とうてい不可能な条件のところに面接を申し込みます。

そのあとは、面接に行けなかったり、面接に行って合格した場合でも仕事を始める前に怖気づいて出勤できなかったりします。出勤できたとしても、様々な理由で無理が重なり、長期的には働けないことが多いでしょう。

 

それに対し、ステップ4以後の人の特徴は、

  • 控えめ
  • 落ち着き
  • 慎重(無理しない)
  • 階段を一段ずつ上る
  • 言行一致

です。

 

こちらの場合は、本人は控えめで、威勢のいいことは言いません。

自分がなんでもできるわけではないことを知っていて、無理しないようにしようと心がけています。

就労の場合では、自分が確実にできる仕事を探そうとしますし、オープン(自分が病気だと相手に伝える)で働ける福祉事業所や障害者枠に面接を申し込みます。

言行一致していますし、約束を守ります。

結果的に、ステップ4以前の人と比べれば就活の成功の確率は高くなります。

ステップ4以前か以後かというだけの基準で、ずいぶんおおざっぱと思うかもしれませんが、この点で就職活動の成否が大きく変わることは確かです。

 

切迫型と達観型

ステップ4以前を「切迫型」、以後を「達観型」と呼んでもいいかもしれません。さて、あらためて、あなたは「切迫型」でしょうか?「達観型」でしょうか?

 

自分の胸に手を当てて、正直に感じましょう。

「やればできる。自分の力で何とかするんだ!」と思いつめていますか?

それとも、病気に「マイッタ」していますか?

自分の行く末を「お天道様」にゆだねていますか?

 

「達観型」であればよいですが、「自分は『切迫型』だなあ」と感じる方もいるでしょう。無理やり「病気に観念する」ことはむつかしいと思います。

まずは自分が病気に観念していない状態にいることを認め、自覚しましょう。就職活動は見送ったほうがいいかもしれません。

あるいは、もし就活するにしても、うまくいかなかった場合に、「うまくいかなかった理由は、自分が観念していないからかもしれない」と考える視点・材料にすることは大切だと思います。

 

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谺(こだま)
谺(こだま)こと、児玉朋己といいます。 歌うピア・サポーターをしています。 静岡県藤枝市にある自立生活センター「おのころ島」が運営している地域活動支援センター「りんりん」の施設長です。 精神障害を持つ方へ同じ当事者としてピアカウンセリングを行うほか、シンガー・ソングライターとして音楽活動をしています。